突然だった
先日、実家の祖父が亡くなった
27日早朝の事だったらしい
気が付けば何度も家族から連絡があり、折り返しかけようとしたその時、また携帯が鳴った
「おじいちゃん、亡ぐなりました」
弟の声は妙に冷静だったように記憶している
私は三月公演「眼のある風景」の稽古に入っており、即座に帰るのは難しかった
それでも29日がオフだったことは、天佑といえた
火葬を私ひとりの都合の為に29日まで延ばして貰い、28日稽古終了後、電車が無いので夜行バスに乗り込む
結構な雪にも拘わらず、バスは五分と遅れず鶴岡駅前のホテルに着いた
鶴岡駅の始発がまさかの7時43分…
一時間半の待ち時間には閉口したが、乗客用の優待券でホテルの風呂に入り、帰宅前に身を清められたのは却って良かったかもしれない
始発電車は、久しぶりに見る雪原を縫って新潟方面へ走る
除雪されていないプラットホームに降り立ち、三分も歩かないうちに実家の前に
忌中の構えに一瞬躊躇した
迎えてくれたのは、普段とさほど変わらぬ家族と親戚
脱ぎかけたコートもそこそこに、まっしぐらに祖父のもとへ行った
顔に白布をかけられ横たわっていた
布を取って驚いた
まるで、ただ眠るようにじっちゃんがいた
何か喋ったとは思うが、言葉が無かった
聞けば、この上なく潔い死に様だったらしい
最近6キロも体重が増え、前日もたっぷり食べて寝た、と
百までコースと見せかけて、まるっきりフェイントだ、と
夜中トイレに立ったのだろう、布団に入らずベッドの横に背をもたれ手すりに片手を掛け、誰にも何の迷惑も掛けずに逝ってしまった、と
すぐに帰りたかったよ
遅くなって悪かったなあ、ごめんなさい
でもちゃんと会えて本当に良かったよ
火葬には立ち会えたけど、通夜の前にいなくなってしまうじじ不幸な俺を許して
あ、ちょっと待って
まだ燃やさなくてもいいじゃないか
こんなに顔色がいいのに、「ああよく寝た」って今にも起きそうだよこのじじい
なんだか色んな思いを、一気に流し込まれた帰省だった
絵に描いたようにポックリ逝ってしまった
昨年、母方の祖父が亡くなった時は四国に旅公演に出ていた
「親の死に目にも会えない商売」という
…けれど、人の心を体現する役者が、肉親の葬儀に行かれない因果をつくづく痛感した
亡くなった27日、稽古が終わった後0時を過ぎても帰る気になれず、最寄り駅の近くの焼鳥屋に入り熱燗と串を数本頼んだ
お猪口は二つ
祖父と呑もうと思って、ちょっとロマンティックな事をしてみた
酒が入ったのもあってか、普段寡黙な祖父も多弁だった
生きている時にはこんな風に差しで呑まなかったね
私も大いに語った
もっと色んな話を聞けば良かったと
潔いのも大概にせぇと
いま稽古している「眼のある風景」は、人の、芸術家の抱える矛盾や葛藤を色濃く描いている
多少の違いはあれど、突然の祖父の死で、その事を図らずも実感してしまった
悲しいけど、この事は俺の中で凄く生きるよ
ありがとう、じっちゃん
しばらく会う予定はねぇけど、またな
弔辞替わりに
孫代表 白幡大介

2月.2,2012